力業【ちからわざ】
こんにちは!
とみやんです!
世の中にっちもさっちもいかない場合力業で解決しなければならないことってありますよね!力業!
本来の正しい意味は下記の通りのようですが、(2.)の方の意味が転じて「強引に解決する」というニュアンスで使われることも多い言葉です。力業。
力業【ちからわざ】
1.体力を要する仕事。力仕事。
2.力の強さに頼ってするわざ。
管楽器修理の世界では本来の意味通りの力業で直さなければいけないものも沢山あるのですが、強引に解決するのはできれば避けたいところです。
管楽器製作の場合も基本的には理にかなった設計と製造でより吹きやすい楽器、より性能の良い楽器を心掛けているのだと思いますが、世の中にはある問題を強引に解決した楽器っていうものがあるのですよ。
次の写真を御覧ください。
おわかりいただけたでしょうか?
一般的に管楽器に使われる管の形状はその断面が真円であることが良いとされています。みなさんも当たり前にそう思っていますよね!
しかし写真のピストンの内筒管(ないとうかん)、いわゆる空気の通る筒状の管は、その断面がご覧の通りの楕円形?四角?角の取れた四角?とにかくそんな形をしています。
なにこれ?
最初に出会ったときの感想です。
これはキングというメーカーのスーザフォンのピストンの写真です。
なぜこのような形状をしているのかと想像するに、内筒管の断面が真円であるよりも、平べったい管にしたほうが上下方向の寸法を短く出来るので、演奏する際のストローク(ピストンを押す距離)を短くすることが出来るのですね。これによってマーチングやドリルの現場で歩いたり走ったりしながらの演奏でも素早いピストンワークが可能になるのではないでしょうか?
まさに力業!※強引に解決するの意味で
しかも実はこのピストンにはもうひと工夫あるのです!!
ピストン軸がオフセットされているんです!
こうすることによって人差し指-中指-薬指の間を狭くすることが可能なのですね。指を大きく開く必要がないのでスムーズなアクションが可能になります。
まさに力業!※そろそろしつこい。
マーチングやドリルという過酷な現場、しかもスーザフォンという大きくて重い楽器を少しでも演奏しやすいように作るというコンセプトが非常に明確に現れた楽器だと思います。自分はトランペット吹きということもあるのでしょうが、修理上がりのこのスーザフォンを試奏してみても音程や抜けに問題を感じることはありませんでした。修理しながら予想していた通り右手のポジションが非常にコンパクトでストロークが短いこともあり、驚くほど演奏しやすかったです。すごい!
力業、力業と連呼してしまいましたが、本当は演奏者の体への負担を少しでも少なくして、より音楽に集中出来るように配慮されたとても素晴らしい楽器だと思います。発想こそ我々日本人にとっては強引に感じる部分がありますが、実にアメリカンで合理的な考え方なのだなぁと思いました!